空の在処6

ドイツに来て知った事は、いくつもある。けれど、その中でも有る意味予想通りだったのは、お互いに筆無精だったことだな、と燎一は苦笑した。
 手の中には、彼からのはがきが一枚。それは「年賀状」と呼ばれるモノで、燎一がこの国に来てから初めてもらう彼からの手紙だった。
 もっとも、自分が出したのも、母親に急かされてのクリスマスカードだから、まったくもってお互い様、としか言いようがない。
 けれど、たまに短い電話はする。お互い、多分言いたい事の半分も言えないまま、けれどその存在を確認するかのように。
 多分、これはとても幼い恋愛なのだろう。けれど、それでもまるで奇跡のようだ、と燎一は思う。
 ―――…次会う時は。
 決意を確かに瞳に宿して、見送りに来た彼は言った。
 ―――今度は絶対追い越してやる!
(やれるもんなならな)
 その挑戦を、自分は勿論受けるつもりだ。自分だって、彼に負けるつもりなどなかった。
 彼は自分に追いつき、追い抜こうとする。自分は彼を引き離そうとしている。
 まるで子供の追いかけっこそのままだ。
 そんなことを思いながら、窓から空を見上げた。
 当然ながら、空は東京のそれと同じだった。青く、ゆっくりと雲が流れていく。
 彼女は空から、今も自分を見守っているのだろう。おそらく、穏やかな笑みを浮かべながら。
 そうして、空は遠い日本へ、確かに繋がっているのだ。あの雲は、いつの日か雨となって日本に降り注ぐのかも知れない。彼を守るように。
 そんな事を思い、自分がこんなにもセンチメンタリズムを持ち合わせていたことに、もう一度苦笑する。
 けれど、それくらいの甘さは、きっと許されるはずだ。
 自分たちは歩き出し、止まらない。
 けれど、道は必ず重なる。…重ねてみせる。
 寂しいとは思わない。ここには母もいるし、妹もいる。かずえの変わりは誰にもなれないけれど、彼女たちも確かにかけがえのない家族だった。
 日本から遠い、この地で自分は成長する。彼に相応しい人間になれるように。彼女の願い通り、幸福になるために。
 もう一度、空を見上げる。
 そう、寂しくもない。悲しくもない。後悔も、しない。迷う必要すら、なかった。
  


 空は、彼女に。



 そして、彼へと繋がっているのだから。





 ――――――いつでも、空はここに有る。



END



                                   

天城×将/キリリク:嵐林隼人様

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