「これで俺も、楽になれる・・・」
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エリートコースをひた走る新米刑事。
耕一の父・賢治の死について取調べを行う長瀬刑事に同行してきた。
正義漢に見えるが、実の所は世間を騒がす猟奇殺人の犯人であった。
しかし彼は好んで殺戮を行っているわけではなく、彼の中に眠る鬼の血が本能を掻き立て柳川はそれに抗うことは出来なかった・・・。
そしてその圧倒的な鬼の力を以って虐殺と凌辱を繰り返す毎日。いよいよ人間の理性が保てなくなったとき、同じく鬼の力を持ち、しかもそれをコントロールできる柏木耕一に出会い、彼と闘い、最後にはその命を散らす。
貴之という大切な青年を一人残したまま・・・。
| 概要 | 説明 | |
| 容姿 | クールで理知的なメガネの青年 | 見かけは単なる若輩サラリーマンだ。何のひねりも感じない |
| 性格 | 昼は軽度に温厚。夜は重度にサディスティック。 | 普段は目立たないが、夜になれば柳川の独壇場。彼の陵辱プレイはもはや重症。その前に柳川自身が重症だ。それは自分でも分かっているハズ・・・。 |
| 言動 | 昼は刑事。夜は殺戮と陵辱の鬼 | 勘が鋭い長瀬一族の目をくらましてのうのうと日常生活を送る柳川は大した役者だ。しかしそれも夜になれば塵と化す。化けの皮が剥がれた後は、誰かが殺してくれるまでその狂気の時間は止まらない。 |
| 趣味 | 貴之の世話。殺戮、陵辱。 | 鬼の力に負けた人間の哀れな末路。ただ、本能のままに夜の街を跳ね回る。それでも貴之の存在だけは柳川の心を人間に戻してくれたのだ・・・。 |
| 特技 | 鬼の力 | しかし、それは自分を制御できなかった結果生まれた一匹の暴走した鬼でしかない。 しかも、耕一より弱い・・・。 要するに意味がない男ということになる。哀れだ・・・。 |
私的分析
痕には悪役がいる。
柏木耕一には敵がいる。
自分の中に潜む鬼の血という力を制御するために、日々自分の心と闘い続ける柏木耕一。
それは、目に見えないものとの闘い、内に秘めた闘い。
しかしそれとは全く別に、確固たる形を持って、姿を持って耕一に牙を向く存在があった。
これは耕一にとって、言わば外へ向けられた闘い。つまり敵との闘い。
そしてその敵とは、柏木耕一と同じく鬼の血を引く者。
鬼の名は、柳川祐也。
痕で唯一の悪役キャラ。
全ての憎悪をその身に受ける損な役回りだ。
単なるさえない三流大学生でしかない耕一と違い、
柳川には警視候補生という立派な肩書きがあり、絶対無敵の鬼の力もある。
現在の彼は、端から見れば羨ましい限りであったかもしれない・・・。
しかし、彼には未来が無い。
現在は隆盛を誇っても、それに続く未来が無かったのである。
エリートコースを進んでも、周りには疎んじられる疎外感。
鬼の力を持ちし者でも、その力を制御できずに心を乗っ取られてしまう無力感。
それは柏木耕平を父に持った時に定められた、鬼の血に翻弄されるしかない呪いだったのだろうか。
結局柳川はどうあがいても幸せになることが出来ない。
なんて、悲しい男・・・。
それでも、鬼の血に乗っ取られるとしても、せめてその圧倒的な力を以ってして欲望に忠実にと、殺戮と凌辱の日々を繰り返す様。
これがさらに事態の悪化を招くということに気付くことも無く。もはやそこへ思考を巡らすことすら困難になるほどの狂気の毎日。
言わば人間としての柳川は既に死んでいるのであった・・・。
後はその力尽きるまで狩猟者としての自分を開放させるしかない。
なんて、哀れな男・・・。
結局それは自分の滅亡を早めるだけである。
それでも身体は正直で、ただその力を遺憾なく発揮しようと自分を開放させるのであった。
本能のまま生意気な女子高生を手篭めにして、
「身体は正直だぞ」
欲望のまま大人の魅力溢れる雑誌記者を捕獲して、
「ここをこんなにしておいて、許しても何もないものだ」
興奮のまま知性ある女子大生を汚して、
「いい女はオスを引きつけるのだ」
まさにヤりたい放題。言いたい放題。そのセンスは良し。
そんな自分本位な柳川。
しかし、結局はそれしか選択肢が無い柳川。
ひと時の快楽を追い求めて、ひと時の満足感を得たとしても、
それは逆に自分の寿命を縮めている行為。
最後は必ず滅ぼされてしまう運命。
なぜなら、
その後待っているのは、鬼の力をコントロールする耕一による裁きの鉄槌か、貴之の銃弾でしかないからだ。
千鶴さんを殺された怒りの耕一に敵うはずも無く、非力な貴之が自分に向けて銃を向けるなど想像もできるはずが無く、
ましてや楓という最強パートナーを得た耕一に勝てる存在などこの世にありはしない。
どんな選択肢を選んでも、最後に待つのは100%の死。
因果応報とは言うけれど、
そんな余りにも救われない男の葛藤を、
誰が分かってやれたのだろう・・・。
誰も分かるはずが無い。
痕という物語の中で、悪役として、憎むべき敵として、ただ朽ち果てるしかないのであった。
一欠けらの救いも無い・・・。
例え同じ鬼だとしても、柳川は柏木耕一には絶対に勝てない。
そう、決まっているのだから。
力においても、心においても、運命においても・・・。
結局鬼の血に負けてしまった弱き柳川は、鬼の力を制御できる狩猟者のエリート・耕一にとっては赤子のような存在でしかない。
なんて、立つ瀬の無い奴・・・。
結局滅びるしかない運命を持つ柳川は、ただ、哀れだ。
そんな柳川。
さぞかし耕一が羨ましかったに違いない。
鬼と共存できるという事実。
簡単なようだが、選ばれたものにしか与えられない能力。
それが出来ていれば柳川ももしかして、全く違う道を歩めたのかもしれない。
父・耕平のように、社会的に地位を確保しつつ、「若き警視総監・柳川祐也」と名を馳せていたのかもしれない。
甥・耕一のように、ハーレムを築けたのかもしれない。欲望のはけ口でしかなかった彼女達とも、甘い物語が待っていたのかもしれない。
しかし、事実は一本道。
結局鬼の力に負けた柳川祐也は、破壊して殺戮して凌辱した挙句に身を滅ぼすしか道は残されていないのであった・・・。
でもそれだけでは柳川を憎むことしか出来ない。
柳川とは本当はそんなやつじゃなかったはずだ。
その心を少しでも知る人がいれば、彼を憎む心が憐憫に変わり、
柳川の心を少しでも分かってあげられるかも知れない。
癒してあげられるかもしれない。
そう思い、柳川の真相を辿ったとき、
彼の心は実はとうの昔に癒されていたことが分かる。
それは、阿部貴之の存在に他ならなかった。
ただの学生。
しかし親友で弟のように大切に思っていた。
柳川が唯一自分と現実世界を繋ぎ止めていたのが、他ならぬこの青年であって、
柳川の記憶の中で、彼は笑い、懐き、ただただ輝いていたのだ。
色あせることなく脳裏に焼きつく貴之というかけがえの無い存在
もしかしたら柳川は、この弟のような青年のおかげで自分を保つことが出来ていたのかもしれない。
貴之が昔のままに笑顔を向けてくれていたのなら、孤独にも負けず、鬼の力にも負けず、
ただ柳川は、柳川祐也として生を全う出来たのかもしれない。
しかし、現在柳川の目の前に居る貴之はもはや廃人であった。
その虚ろな瞳、
まるで柳川の未来を啓示するかのように暗く濁っている
こうして柳川は最後の安らぎを失った。
貴之を麻薬中毒へと追いやったヤクザを殺しても、その怒りはもはや取り返しがつかない所まで行き着いて、
後は彼を止めることのできる枷は無く、ただ殺して犯すだけの化け物への道しかない。
頼られることを励みにし、好意に対して好意で報い、お互い笑い合ったあのマンションでの日々。
そこには確かに愛情が存在して、それは紛れも無く人間としての柳川にとっては最後の希望だった。
しかしその希望が閉ざされたとき、人は化け物となり、そして最後には容赦なき死が・・・。
これが、柳川祐也の人生。
鬼の子として生まれ、その業を背負いながらも人間として生きようと踏ん張っていた、本来は正義感強く、心優しい青年。
そんな人間らしい彼の心は報われることなく、千鶴の父のように、耕一の父のようにその身を滅ぼす。
耕平や耕一のように選ばれた男として名を連ねることは、もはや適わない。
そんな報われない男。
地位も、未来も、大切なものも失い、最後には命も散らせた哀れな男に、せめて手向けを掲げるとしたら・・・。
それは鬼の力に翻弄されてなお、最後まで忘れることなく大切にしてきた、貴之という青年との思い出・・・。
最後に滅ぼされとしても、それでもやっと彼の悪夢は終わったのだから・・・、
せめて楽しかった思い出を抱いて貴之の傍に行けばいい。
そしてもしそれが出来たのなら、
柳川にとってそれは唯一の救いであったのかもしれない。
人間として生まれ、鬼として終わった柳川の悲しすぎる物語。
死に際だけは、せめて安らぎと共に・・・。
さようなら、辛かった現実。
さようなら、悲しすぎる悪党。