正統?異端?スガワラ的スジ彫り万能論
スジ彫り万能論・応用編その1


(1)彫りの角度


「境界を決めるのではなく、境界を正面から見えないところに隠す。」
前回までで、これがどういう事なのかおわかり頂けたと思います。


ただ、前回お見せしたこの(D)図、私が実際このように彫ることはあんまりないです。ではどのように彫るかというと・・・


こんな感じ。つまり「彫る角度」。面に垂直ではなく、ある程度角度をつけて彫ることで、塗り分け境界はより見えにくくなります。出来るだけ死角に追い込もうという魂胆。


そしてこれは、「出来るだけ塗り分けをきっちり見せる」のと同時に「ディテールアップ」の意味をも持ちます。


上はレイとアスカの首まわり。レイでは赤い部分・アスカでは青い部分を見て下さい。私はここをプラグスーツの一部ではなく、インナースーツがちょっとだけ顔を出しているのだと解釈。ということで、矢印の方向に彫り込みました。アスカの方がより分かりやすいかな?

つまり「別パーツ感」です。矢印方向に彫ることで「違うパーツである」こと、更に「多層構造であること(←インナーが内側に潜り込んでる感じ)」を演出できます。わざわざ本当に別パーツにすることなく、です。


こちらは腕パーツ。同様に「紺のスーツの上に肩プロテクタが被さっている」感を出すために、矢印方向に彫り込んでます。わかりますかね?


 こちらは膝まわり。この写真では単にツヤ分けしてるだけに見えるかもですが・・・


これならよく分かるでしょう。矢印部分に注目。この部分はもともとはツライチでした。キットにこのような段差はありません。ここも面に垂直ではなく、膝に向かってスジ彫りを入れ直しています。で、その後彫りの片側だけエッジを落とす処理。わざわざ段差をつけて、「膝パーツがプロテクタである」ことが明確になるようにパーツを加工しています。数値で言えば1mmないほどの些細な差異なのですが、この差が全体にどういった影響を及ぼすか、わかる人にはちゃ〜んとわかるはず。


ここも同様。腕部分。もともとはツライチ。塗り分けラインをシャープに彫り直して、その後で段差をつくりました。拡大写真を見ればわかると思います。私の「インナー・アウター」という解釈の表れです。


こちらは同一ラインでありながら彫り角度を変えている部分。レイの腹部。赤矢印部分は面と平行に、青矢印部分は面と垂直に彫ってあります。何というか、お腹の上に硬いプロテクタパーツがあって、そのプロテクタに胸が支えられてる(かぶさってる)という感じ。


上記はたまたま全て塗り分け・ツヤ分けされており、はっきりした黒でスミ入れされていますが、必ずしもその必要はありません。「彫る」だけで十分ディテールアップ効果はあると思います。

もうおわかりですよね?このテクニックはフィギュア製作の至る所で応用可能です。首と襟・袖と腕・おぱんつと太もも・靴下とふくらはぎ・足首と靴、etc・・・



ほんの一例ですが、上の写真赤矢印部分。「肌があって、その上に布が被さっている」感じを演出することが出来ます。ただ単に彫り込んであげるだけでも別パーツ感は出せますし、それだけで十分スキルフルと言えるかもですが、更に1ランク上を狙って、「彫りの角度を吟味する」作業、ぜひやってみませんか?
確かに斜めに彫るのは垂直に彫るよりずっと難しいです。でも、頑張って修得する価値のある技術だと思いますよ?